★★この章の学習目標★★
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教材の出入口を明確化する為に用いる3つのテストの名前をあげ、その役割を説明できる
学習目標を明確化する為の3つのポイント(学習目標・評価条件・合格基準)を当てはめて、
与えられた明確でない学習目標を明確化することができる。
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教材を作成する場合、その教材の責任範囲を明確にする必要があります。責任範囲とは、何が出来ればその教材が教えようと意図したことを完全に習得したとみなすことが出来るのか、それをあらかじめ決めておこうという事です。(これを決めておかないと、教材が成果を挙げたのかそうでないのか判断することが出来ませんよね)
このように責任範囲を明確にする事はとても大切なことなのでIDの手法では、学習目標を定め、さらに、3つのテストを利用することで、教材の責任範囲を明確化しようとしています。
●学習目標
学習目標は、簡単に言ってしまえば教材の「ねらい」という事です。この章の最初にも学習目標を記述してみました。ここが云わば教材の出口にあたるわけですが、ここでのポイントは、学習の結果身に付くものを具体的に書く、という事です。
(学習目標の明確化、の項で後述します。)
●事前/事後テスト
教材を勉強したあとで、学習目標に到達できたかをチェックするのが事後テストです。通常、最も一般的に使われているテストの意図がこの事後テストにあたると思われます。
事前テストは、教材が教えようとしている事を学習する前から既に身に付いているかどうかを判断する為のテストです。このテストでは、教材をやる必要がある人かどうかの判断を行います。(既に知っているなら、教材を学習する意味はないので。)その為、事前テストと事後テストは同じテストを利用します。
●前提テスト
教材を学習するに当たって、どうしても必要な前提知識を持っているか判断する為のテストです。つまり、教材を学習する資格があるかどうかの判定という訳です。
●学習目標の明確化
学習目標を明確にするためのポイントは、以下の3つの事柄といえます。
- 学習者の行動で目標を示す
何かを学んだ結果は、必ずしも目に見える形で表に出てくるとは限りません。その為、学んだ結果の評価は学習者に何かをやらせてそこから判断する事になります。学習者に何をやらせるのか、をそのまま書いたものを「目標行動」といいます。例えば、「三国志について理解を深める」事を確かめる手段として例えば「三国志のあらすじを自分の言葉で書けるようにする」という目標行動が設定できるわけです。
- 目標行動が評価される条件を示す
目標行動が「ビーフストロガノフが作れるようになる」だった場合、教材を学んだ後、事後テストを実施するわけですが、どんなテストが予想されるでしょうか。最も簡単なテストは、「レシピを言うことが出来る」でしょう。「与えられた材料から実際に作ってみる」かもしれませんし、「材料の買出しからはじめる」かもしれません。学習目標を明確化する第二のポイントは、「評価条件を明記」することです。
- 学習目標に対する合格の基準を示す
最後のポイントは、「合格基準を明らかにしておく」です。
例えば計算問題の場合、全問正解が望ましいかもしれませんが、ある程度の計算ミスも考慮して、8割正解でも教材の内容を理解した、と判断できるかもしれません。このように、合格の基準を明確にしておくことで、どの程度の正確さやスムーズさを要求しているのかが明らかになります。
以上の3つのポイントを明らかにすることによって、学習目標が明確化できます。
※この文章は、IDの考えに則った教材を作成するために、
「教材設計マニュアル」著:鈴木克明 北大路書房
を参考にIDの考え方を紹介するとともに、実際に教材を作成してみる事を目標にしています。IDの考え方に興味を持たれましたら、是非、原書の参照をお奨め致します。
(ここでは文字数の都合で紹介しきれなかった、様々な示唆、ノウハウに接する事ができます。)