引き続き、eラーニング白書2007/2008より、気になるトピックスを紹介していきます。
今回は、団塊世代の大量退職により技能継承問題、いわゆる、2007年問題とその
取り組みに関してです。
団塊の世代の引退により、企業内に蓄えられた技能をどのように
継承していくかは、企業にとって大きな課題となっています。
「平成17年度能力開発基本調査概要(平成18年6月厚生労働省発表)」調査によると
2007年問題に危機意識を持つ企業は、33.7%(平成17年度)で。前年度の22.4%に比べて
危機感が高まっている。業種別にみると、「製造業」「建設業」が約4割とこれらの危機感
が特に高い。
また、その中で、2007年問題への取組状況としては、
・必要な者を選抜して再雇用を行い、指導者として採用予定
・希望者全員を雇用延長、嘱託として再雇用予定
・中途採用を増やす
・新規若年者の採用を増やす
といった対策をとっている企業が多い。しかしながら、
「退職予定者の伝承すべき技能・ノウハウなどの文書化」や
「若年・中堅層に対する技能・ノウハウの伝承」などの回答は一割弱であり、
具体的な技能継承の取り組みはまだまだ進んでいないことが伺える。
従来、このような部分は、暗黙知とみなされ、eラーニングはほとんど活用
されてこなかった。ところが、映像や音声などを駆使して、eラーニングを技能継承に役立てる企業がでてきた。
■三井化学株式会社での事例
導入の背景
化学業界は知識集約産業であり、危険物の取り扱いも多く、施設は大型でその取り扱いは複雑である。
これまでは、業務に必要なノウハウをベテラン社員がOJTで教育していたが、
ベテラン社員の減少に加え、OJTに時間がかかり、担当者によって勤務時間帯が
異なるなどの問題があった。そのため、従来型の集合研修が困難となり、2000年頃からeラーニングに注目した。
コンテンツの内容
工場の現場では、使い勝手がよく短時間で学習できるコンテンツが求められたため、
IDの手法を用いて受講者中心のコンテンツとなるように設計された。
各講座は複数のコンテンツからなり、1コンテンツの受講時間は5~10分となるように作成された。
また、IDの考え方にのっとり、学習する内容をできるだけ具体的にし、
学習成果が明確になるように心がけた。
2007年問題への対応
2007年問題に対しては、プラント技術の伝承・継承教育用に動画コンテンツを
作成して対応している。ベテラン担当者が退職しても技術が途絶えないように、
動画などを活用したビジュアルな教材として残している。
評価・測定
1回あたりの学習時間平均は、2.3時間、講座完了までの学習時間は、平均9.8時間であった。
また、アンケートの結果より、80%以上が「成果があった」、52%が「コンテンツは良くできている」
と回答しており、現場の評価は高い。
■参考文献
eラーニング白書 2007/2008年版
この記事は、eラーニング白書から、テーマに沿って抽出・要約・引用したものです。
白書には、このほかにも示唆に富んだ記事や調査結果が掲載されておりますので
興味がございましたら、白書の方も参照ください。
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